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新規事業や新サービス立ち上げの際に、ASP、パッケージ、オープンソース、スクラッチの中からどの開発手法を選択するのがいいのか、というのはコンサルティングをしている中で数多く受ける質問の一つです。
しかし、これに対してはたった一つの質問で開発手法の方向性を決めていく事ができます。
そこで、今回はその質問から選択できる開発手法を見てみましょう。
目次
そのサービスは何を提供するものですか?
一つ目の質問は、「そのサービスは何を提供するものですか?」というもの。
サービス内容が決まっていない場合
これ、かなり不思議なお話に聞こえるかもしれませんが、新規事業や新サービス立ち上げのご相談をいただく際に、サービス内容が全く決まっていないケースというお話は実際のところ数多くあります。
この場合、作るものが決まっていないので開発手法をこの段階で選ぶ事はできません。
そのため、コンサルティングはまずどういった事業やサービスを立ち上げるのか、というところを決めるところからスタートします。
この段階で予算や期間、開発手法の話をするのは、絵に描いた餅を生産する工場の建設予算を立てるようなものですので、やめましょう。
サービス内容が決まっている場合
立ち上げる事業としてのサービス内容は決まっているが、詳細は決まっていない場合。
この段階のお話も多いです。
ECサイトを立ち上げる、オウンドメディアを立ち上げる、オンラインマッチングサービスを立ち上げる、というように大枠が決まっているという状態ですが、具体的なサービス詳細はこれからという状態ですね。
この段階でも開発手法を選ぶ事は難しいものがあります。
例えば、オンラインマッチングサービスといっても、ヤフオクのようなサービスなのか、メルカリのようなサービスなのか、それとも人材マッチングのようなサイト運営者側でマッチングを行うサービスなのか、までターゲットユーザーからマッチング方法まで様々な選択肢があります。
これがしっかりしてない場合、単なる物まねサービスを立ち上げるだけとなってしまいますので、通常は事業のビジネスモデルを固めるためのコンサルティングを行っていくところからスタートします。
このようにビジネスモデルによって、予算や開発期間、必要となる機能は大きく異なりますので、この段階でも開発手法を決めてしまうのは危険ですので、コンサルティングによりここからさらに落とし込みを進めて行くのが一般的です。
ただし、例外として二匹目のどじょうを狙って物まねサービスを立ち上げる場合や、商材やサービス内容だけを決めて、テストマーケティングから事業機会を探す、というケースがあります。
この場合には、機能は最小で必要な機能は運用でカバーする事により、できるだけ短期間での立ち上げが求められるため、必要な機能と予算に応じてミニマムだとASP、ある程度の予算が付く場合にはパッケージかオープンソースが選択されます。
サービスから生まれる価値が明確な場合
具体的にサービス内容が決まっていて、それが生み出す価値を明確に語れる状態の場合。
ここからは、その価値を明確にサービスとしてシステムに落とし込む段階となりますので、この段階まで来て初めて開発手法が選択できるようになります。
しかし、そのサービスが生み出す価値について考えると、さらに大きく二つに分けられます。
この二つについては、もう少し詳細に見ていきましょう。
価値はどこで生み出されるのか?
明確にサービス内容が決まっていて、それが生み出す価値を明確に語れる状態にある場合、その価値の源泉が何にあるかがシステム開発におけるポイントになってきます。
この場合のシステム開発とは、ビジネスモデルを実現するために必要な機能を作るということであり、ただ単に機能を作るだけでビジネスモデルを実現できるのかがポイントになります。
システムで提供するWebサービス自体に価値がある場合
例えば、フリマアプリのメルカリとオークションのヤフオクとを比較して考えてみましょう。
機能 | メルカリ | ヤフオク |
---|---|---|
会員登録機能 | 〇 | 〇 |
出品機能 | 〇 | 〇 |
入札決定条件 | 早い者勝ち又は交渉 | 交渉又は高額入札 |
コミュニケーション機能 | 〇 | 〇 |
ユーザー評価機能 | 〇 | 〇 |
利用可能な決済方法 | 〇 | ◎ |
出品手数料 | 無料 | 有料 |
取引手数料 | 10% | 会員:8.8% 非会員:10% |
機能面だけ見れば、いまやフリマ機能もあるヤフオクの方が多機能で作りこみはされています。
しかし、メルカリはこの機能比較表ではわからない部分にビジネスモデルの強みがあります。
それは、「出品の簡単さ」と「交渉で値段が下がる楽しさ」です。
メルカリを使っての出品方法については、メルカリ:メルカリ出品までの流れ・売り方をご覧いただくと良くわかりますが、ヤフオクと比べると非常に簡単。
スマートフォンで商品の写真を撮影して、タイトルと商品詳細、価格を入れて「出品ボタン」を押すだけで、誰でも簡単に出品ができます。
また、ヤフオクはオークションですので表示されている価格以上での交渉をするか、入札で競り落とす必要がありますので、表示されている価格よりも下がって購入することはできませんし、販売する側も購入する側も「商品を販売する」ことを目的としています。
一方、メルカリは表示されている価格は出品者の希望価格であり、そこから価格交渉によって下げてもらえる可能性があるため、出品者とコミュニケーションを行う事が楽しさにもなっています。
このように、機能面だけを比較すると殆ど同一に見えるが、サービスとしては全く違ったものになっているのがメルカリとヤフオクであり、メルカリはオークションとフリマと似て非なるビジネスモデルを上手くWebサービスに落とし込んだ成功例だと思います。
このメルカリのようなサービスがない段階において、「ヤフオクの劣化版」となるか、「ヤフオクのビジネスモデルを再定義」するかで、取るべき開発手法は大きく変わるのはわかると思います。
ここで「ヤフオクのビジネスモデルを再定義」して新たに「フリマアプリを作る」となった場合には、フルスクラッチしか成功への近道はなかったでしょう。
システムがサービスの価値に影響しない場合
メルカリのビジネスモデルは今までになかった全く新たなビジネスモデルであり、サービスの提供方法自体に価値があるため、フルスクラッチしか選択肢がありませんでしたが、新規事業や新サービスにおいてその必要がないものもあります。
例えば、世の中にない商品やサービスを提供するための注文サイトやECサイトのようなものです。
これらの価値の源泉は商品やサービスの方にあり、その商品やサービスをユーザーに届ける事の方が重要です。
そのため、こういった場合にはフルスクラッチでなくても、予算に応じてASPやパッケージ、オープンソースといった選択肢ができる可能性が高くなります。
開発手法を考える前に
システム開発を行う際に、ASPやパッケージ、オープンソース、スクラッチという中でどれを選択するのは確かに悩ましい問題ではあります。
これに加えて、予算と期間も考える必要があり、予算と期間は潤沢にあればあるほど望ましいのは確かです。
しかし、実際の新規事業や新サービスの開発において、予算はあるけどなぜその会社がその事業に取り組むのか、サービス自体の価値の源泉となるものがどこにあるのか、という不思議なお話は数多くあります。
どうしても世の中に出したいというサービスがあってその価値の源泉が明確となり、予算と期間が決まれば、自ずと取るべき開発手法や実現手段は決まります。
予算や期間が少なくても、素晴らしい価値を持ったサービスであれば、価値の源泉をできるだけ損なわない形での問題解決方法を考える事もできます。
我々は、ITの技術を使って、素晴らしいサービスを世の中に出していくお手伝いをしたいと思っており、その実現方法について常にウォッチをし続けています。
そのため、どんな素晴らしい事を実現したいのかを皆さんは考えていただく事に専念していただければと思います。
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