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2020年10月1日に発生した東京証券取引所のシステム障害。
原因としてはハードウェアの障害だったようですが、終日売買を停止して対応が行われ、2020年10月2日には平常通り再開されました。
このシステム障害について、日本の新聞各紙は東京証券取引所を非難する論調となっています。
資本市場の心臓部ともいえる取引所で全銘柄が終日取引できないのは過去に例のない失態であり、日本市場の信頼を傷つけるものだ。
日経新聞:[社説]東証全面停止は市場の信頼損ねる失態だ
証券取引所は資本市場の心臓部である。取引が終日、全面的に止まるような事態は本来、あってはならないことだ。
読売新聞 社説:東証終日停止 資本市場の信頼損なう失態だ
東証は2日の取引再開に全力を挙げるが、過去に幾度も繰り返されたシステム障害の再発は、市場の信頼を損ねる失態と断じざるを得ない。
産経新聞:【主張】東証システム障害 市場の信頼損ねる失態だ
一方、IT業界からは東証を傘下に抱える日本取引所グループ(JPX)の横山隆介氏(CIO:最高情報責任者、IT企画担当)の記者会見での対応を賞賛する声が相次いでいます。
東証の記者会見のすごかったところ
— 米村歩@日本一残業の少ないIT企業社長 (@yonemura2006) October 1, 2020
・経営陣がシステムのことを理解している
・記者の質問に真正面から回答している
・できるだけわかりやすい表現を使っている
・外注先に責任のなすりつけを一切していない
・責任の所在は東証にあると明言している
東証のCIOの方すごい。自社のシステムのことをちゃんと理解した上で受け答えしているし、記者に合わせてできるだけ平易な表現で説明するように心がけている。
— BTO (@bto) October 1, 2020
東証の社長の「富士通に責任はない。責任があるのは我々」という発言も素晴らしい。
これがトップのあり方だと思う。
みんなが大絶賛してる東証の会見を見ました。確かにこれは完璧ですね。しかしこれがすごいって言って大絶賛してる場合じゃなくて、大企業のCIOはこのくらいが標準スペックであってほしいです。
— 加藤公一(はむかず) (@hamukazu) October 1, 2020
私見ですが、いまの所、
— t4kimura (@YszVvK7b1j6SXNb) October 1, 2020
システム障害対応の良い例に見えますね。この記者会見はすごい。
売買停止という思い切った経営判断
適切な記者会見
機器の半死からの切り替え失敗は、、これはもうね。。#東証#システム障害対応の教科書 の良い例を載せておきます。 pic.twitter.com/iIDnQHnuSK
新聞とIT業界でこれほどまでに感想が真逆なのは、システム障害に対する前提が異なるからです。
絶対止めるなVS絶対止まる
新聞の論調は、以下のように「なぜ止まったのか?」という事を非難する内容になっています。
本来、1つのシステムが動かなくても、別のバックアップが補う仕組みを確実にしておかねばならない。なぜ今回それが機能しなかったのか、極めて不可解だ。
日経新聞:[社説]東証全面停止は市場の信頼損ねる失態だ
つまり、新聞は「システムは絶対止めるな」という認識であり、「システムは運用次第で絶対止めずに動かせる」という前提で話をしています。
しかし、実際にはこういった取引市場のシステム障害は過去に海外でも起こっています。
NYSEは2015年7月、昼前から約3時間半にわたり全銘柄の取引を停止した。取引システムのソフトウエア更新が障害の原因だった。アップルやマイクロソフトなどのハイテク企業が上場している米ナスダック市場でも、13年8月にシステム障害で売買が約3時間止まった。
LSEは11年2月、午前8時の取引開始直後から昼すぎまで約4時間、取引がストップ。障害は18、19両年にも繰り返され、市場機能に支障が出た。
時事ドットコム:システム障害、過去に欧米でも 受け止め冷静―東証問題
また、少し古い資料ですが、IPAの「海外における IT 障害の影響及び対応策に関する事例調査」報告書(PDF)には、海外の取引市場におけるシステム障害事例が多数掲載されています。
こういったことからIT業界の人間は「システムは絶対止まるもの」という認識であり、「システムはどんなに上手く運用しても止まるもの」という前提で話をしています。
このように前提条件が真逆だと、話が全く噛み合いません。
経営陣がシステムを理解している凄さ
一方、当事者である日本取引所グループ(JPX)の経営陣は、このIT業界の認識を共有できているため、システム障害に対する対応として、システムを再起動して市場を開けることを優先せず、市場を一日停閉じるという判断ができたんだと思います。
東京証券取引所の宮原幸一郎社長は「市場関係者と協議した結果、(仮に取引時間中に復旧できても)システムを再起動すると(証券会社などから送信済みの注文の扱いなどを巡り)投資家などに混乱が生じることが想定され、終日売買停止することにした」と説明した。
日経XTECH:東証システム障害で宮原社長会見「富士通と原因究明進める、損害賠償は考えず」
また、こういったシステム障害が起こった際にありがちなベンダーに責任をなすりつける会見ではなく、責任の所在は東京証券取引所にあるという回答を行ったと思われます。
宮原社長は「富士通と徹底した原因究明をし、その上で再発防止策を協議している。市場運営の責任の所在は私どもにあり、(富士通への)損害賠償は現時点で考えていない」とした。
日経XTECH:東証システム障害で宮原社長会見「富士通と原因究明進める、損害賠償は考えず」
システム障害の内容については、piyolog:2020年10月に発生した東京証券取引所のシステム障害についてまとめてみたが非常にまとまっていますが、東京証券取引所が一日でインフラ系を含めて障害箇所を特定し、翌日に市場を再開したことは、褒められこそすれ非難される内容ではないと思います。
さらに、システム障害に対する前提自体が異なる記者からの的外れな質問に対しても、誠実に理解してもらうように回答をし続けた本取引所グループ(JPX)の横山隆介氏は、賞賛されるべき対応をされたと思います。
システムは絶対に止まる前提で想定が必要
もちろん、どんなサービスでもシステム障害が発生しても、サービスを止めずに運用できのは理想ですが、人間が作るシステムに絶対はありませんし、複数の障害対策を行っても、規模の大小を問わずシステム障害は発生するものです。
実際、東京証券取引所ほどのしっかりした障害対応を取っていても、システム障害が発生しましたし、今回障害が出たバックアップの数を増やしても、そのシステムを制御する部分に障害が出て動かなけれな同様の事態となります。
そのため、「システムは絶対に止まるもの」という前提で想定し、システム障害が発生した場合にどのように対応するかを事前に検討しておく、という方が対応コストの面でも現実的です。
経営者の方は、東京証券取引所のシステム障害のような事態は、どんなシステムでも起こりうることであり、「システムは絶対に止まるもの」という前提を理解して、システム導入や運用について判断をいただけばと思います。
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