Amazonキラーと呼ばれているShopifyはどういったECのサービスでどんなメリットとデメリットがあるのか?

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日本でもテレビで特集が組まれたり、楽天と提携してShopify利用店舗の楽天市場における店舗運営を支援するサービスを開始するなど、ここのところかなり注目を集めているShopify

今回はAmazonキラーとも呼ばれるこのShopifyについて、どういったECのサービスでどんなメリットとデメリットがあるのかを見ていきたいと思います。

目次

Shopifyとは?

Shopifyとは、ECサイトが簡単に構築できるサービスですが、クラウド基盤で動くマルチチャネルコマースプラットフォームです。

日本市場へは2017年から参入が行われました

日本の似たようなサービスとしては、ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)と呼ばれるソフトウェアをオンライン上で貸し出す、カラーミショップやfutureshop、MakeShopなどのサービスや、無料でECサイトが構築できるBASESTORESなどのサービスもあります。

しかし、検索トレンドをチェックできるGoogleトレンドで見ても、オープンソースECパッケージのEC-CUBEやASPサービスのカラーミショップ、WordPressのECサイト構築Plugin(プラグイン)のWooCommerceなどと比較しても、かなり注目度が高いのがわかります。(ただし、東証マザーズに上場したBASEの方がさらに注目度は高いと思われますが、BASEというキーワードだとノイズが多すぎて除外をしています。)

では、今までの既存サービスと比較しながら、Shopifyのメリットとデメリットを見ていきましょう。

Shopifyのメリット

Shopifyを利用するメリットは、以下の5点です。

  1. ECに関わる様々な機能が低コストで導入可能
  2. 独自デザインをテンプレートとカスタマイズ機能で簡単に実現可能
  3. 「アプリ」により自分で機能選択と拡張が可能
  4. 多言語・多通貨対応により越境ECへの対応が行いやすい
  5. プラットフォームの制限を受けにくい

ECに関わる様々な機能が低コストで導入可能

Shopifyの一つ目の特徴は、EC導入に関わる様々な機能が低コストで導入できる点です。

純粋な費用だけ見るとBASESTORESは初期費用が無料ですので、圧倒的にこの二つのサービスの方が安いですが、一定以上の機能が必要な場合には、Shopifyはかなり安いというものです。

Shopifyは、月額$29のベーシックからプランが用意されており、月額約3,000円でEC サイトの運営に必要な多くの機能が利用できるということです。

また、大企業向けの大規模なEC サイト構築に対してはShopify Plusが用意されており、中小企業から大企業まで対応ができる柔軟性があります。

Shopify 価格表
Shopify 価格表

ShopifyではECサイトにアクセスするユーザーが利用する機能を「フロント機能」、ECサイトを管理するユーザーが利用する機能を「管理機能」と呼んでいますが、「フロント機能」と「管理機能」で機能を説明するのはわかりにくいので、どんな機能があるかを具体的にご紹介します。

商品管理

商品管理では、商品数の制限無しに、追加変更削除が自由に行えます。

商品管理
商品管理

在庫管理機能も利用でき、在庫が0になると「売り切れ」の表示が行われます。

商品詳細管理
商品詳細管理

注文管理

注文管理では、注文の管理が行えます。

注文管理
注文管理

注文IDをクリックすると、注文情報詳細が確認でき、編集もできます。

注文管理詳細
注文管理詳細

また、Timelineという顧客とのやりとりをメモする機能もあります。

顧客管理

顧客管理では、商品を購入した顧客の管理が行えます。

顧客管理
顧客管理

顧客情報の詳細もちろん確認でき、顧客情報の編集もできます。

顧客管理詳細
顧客管理詳細

こちらにも、Timelineの機能はあります。

ストア分析

ストア分析では、ECサイトのアクセスや購入についての分析が行えます。

ストア分析 ダッシュボード
ストア分析 ダッシュボード

各項目で詳細なレポートを作ることもできます。

ストア分析 レポート
ストア分析 レポート

ライブビューでは、リアルタイムでの訪問者数や総セッション数、販売合計、総注文数、どのページが見られているのを確認することができます。

マーケティング

マーケティングでは、メールマーケティングや広告を使ったマーケティング施策を実施することができます。

マーケティング概要
マーケティング概要

Shopifyメールを使ったメールマーケティングやFacebook広告、Facebookのダイナミックリターゲティング広告、Snapchat Adなどを使った広告、ソーシャルメディアへの投稿、さらに「アプリ」を使う事でこれ以外のマーケティング施策を利用できます。

キャンペーンの作成
キャンペーンの作成

ディスカウント

ディスカウントでは、クーポンの発行やディスカウントの設定が行えます。

ディスカウント
ディスカウント

クーポンコードを作成すると、クーポンコードを入れたユーザーには一定の割引や、定額での割引、無料配送、プレゼントなどを設定できます。

クーポンコード
クーポンコード

自動ディスカウントでは、セールなどの設定を割引率での割引や定額での割引などで設定ができます。

自動ディスカウント
自動ディスカウント

決済サービス

決済サービスは、Shopifyが用意しているShopify Paymentsを利用することで、クレジットカード決済、Shop Pay決済、Apple Pay決済、Google Pay決済が利用できます。

決済サービス
決済サービス

他にも、PayPalやAmazon Pay、さらに代引き (COD)、郵便為替、銀行振込などが用意されており、自分で契約を行うことで、外部の決済サービスを利用することもできます。

代替決済サービス
代替決済サービス

Shopify Paymentsのベーシック、スタンダード、プレミアムの手数料は、左から以下のようになっています。

SHOPIFY ペイメント
SHOPIFY ペイメント

ベーシックの決済手数料3.4%は、他社と比較するとかなり安くなっています。

これに対して、BASEの決済手数料は、3.6%に毎回40円、別で3%のサービス利用料かかります。

STORESはの決済手数料は、フリープランだと決済手数料は5%、スタンダードプランは月額費用1,980円で決済手数料が3.6%となっています。

ただし、ShopifyもJCBについては4.15%となっていますので、JCBについては他社よりも割高になるケースもあります。

このように、Shopifyは売上が上がれば上がるほど低コストになる仕組みになっています。

アプリ管理

アプリ管理では、Shopifyの特徴である機能を追加したりする「アプリ」の管理ができます。

アプリ管理
アプリ管理

ショッピングカート機能

ユーザー側の使える機能として、ECサイトには必須のショッピングカート機能があります。

ショッピングカート機能
ショッピングカート機能

ショッピングカートでは、注文商品と個数、配送先、配送方法、決済方法が選べ、会員登録しての購入はもちろん、会員登録不要なゲスト購入も可能です。

独自デザインをテンプレートとカスタマイズ機能で簡単に実現可能

Shopifyは、デザインテンプレートとカスタマイズ機能により、誰でも簡単に独自デザインを実現できます。

Shopifyでは、無料のものから有料のものまで100種類以上のデザインテンプレートが公開されているShopify Theme Storeが用意されています。

Shopify Theme Store
Shopify Theme Store

また、Shopifyのデザインテンプレートはテーマと呼ばれており、テーマエディタを使用して、管理画面からテーマ設定をカスタマイズをしたり、テーマに希望する変更の設定が含まれていない場合は、テーマコードを編集して、オンラインストアに細かい変更を加えることもできます。

テーマは変更したり、新しいテーマに切り替えても、管理画面の他のコンテンツについて心配せずに、さまざまなテーマスタイルや設定を試すことができるようになっています。

テーマ編集
テーマ編集

テーマは、ヘッダー、サイドバー、フッターなどのレイアウト変更だけでなく、商品のレイアウトやフォント、色などをカスタマイズできますので、自社独自のECサイトのデザインにすることができます。

ページデザインの編集
ページデザインの編集

さらに、テンプレートファイルのコードを編集して、カスタマイズを行う事も独自テンプレートを作成することもできます。

テンプレートファイルを編集
テンプレートファイルを編集

また、ページ作成やお問合せ、ブログ機能も用意されています。

他にもShopifyには、burstという使用料無料でCreative Commons Zeroのライセンスで提供されている、フリー画像の素材をダウンロードできるサービスも用意されています。

「アプリ」により自分で機能選択と拡張が可能

BASESTORESが出る前にも数多くのショッピングカートをオンラインで提供するサービスは存在しましたが、CMS機能やショッピングカート機能の違い、定期購読機能(サブスクリプション)が使える、といった機能面での差別化を図っていました。

各社多機能を売りにして数多くの機能追加が図られていますが、利用するユーザーにとっては不要な機能がある反面、必要な機能がなかったり、機能が多すぎて操作が複雑、ほとんどの機能を使いきれない、ということも発生していました。

さらに、機能追加は全体で行われるために、個別対応はできませんでしたが、初期費用も月額費用もかかります。

BASESTORESは、これに対して機能を割り切り、初期費用も月額費用もかかる分だけというシンプルな形にしたことで、ライトユーザーの参入を容易にし、新たなマーケットを取ることができました。

一方、Shopifyでは機能拡張について、Shopify App Storeに公開されている無料や有料のShopifyアプリをインストールすることで対応ができるようになっています。

つまり、Shopifyは基本機能だけを提供し、必要な機能は自分で個別で選んで追加をする、という考えです。

Shopify App Store
Shopify App Store

このShopify App Storeでは、Shopifyを使うユーザーであれば誰でも好きな「アプリ」をインストールして自社ECの機能を強化することができます。

また、「アプリ」を買うだけでなく、自分で独自に作った「アプリ」を使用して、管理画面に機能を追加したり、ShopifyのAPIを使用して直接ECサイトのデータにアクセスしたり、カスタムストアフロントを使ってオンラインストアを他のプラットフォームに拡張したりすることもできます。

このように、オンラインサービスなのに機能を自分で選択でき、カスタマイズまでできるのです。

多言語・多通貨対応により越境ECへの対応が行いやすい

Shopifyは、世界175ヶ国以上で利用されているため、多通貨と多言語に対応しており、越境ECへの対応が簡単に行えます。

世界に向けて販売を行う
世界に向けて販売を行う

言語は、英語に加えて以下の言語に対応しています。

  • 中国語 (簡体字、繁体字)
  • チェコ
  • デンマーク語
  • オランダ語
  • 英語
  • フィンランド
  • フランス語
  • ドイツ語
  • イタリア語
  • 日本語
  • 韓国語
  • ノルウェー
  • ポルトガル語 (ブラジル)
  • ポルトガル語 (ポルトガル)
  • スペイン語
  • スウェーデン
  • タイ語
  • トルコ
  • ベトナム語

複数通貨での決済も可能で多言語・多通貨に対応したページを作ることができます。

採用するプラットフォームの制限を受けにくい

Shopifyでは、ヘッドレス・コマースに対応しています。

ヘッドレス・コマースとは、フロントエンドの顧客体験と、バックエンドのインフラ技術を分離するものです。

今までのECとヘッドレス・コマースの違い
今までのECとヘッドレス・コマースの違い

これは、BASESTORESといったECカートのサービスにしても、EC-CUBEやCS-CartといったECサイト構築パッケージにしても、楽天市場やYahoo!ショッピング、Amazonマーケットプレイスといったマーケットプレイスにしても、今までのECサイトはPCやスマートフォン、アプリ、SNSに対応するためのフロントエンドと、商品管理や注文管理、顧客管理、CMS、決済管理、カートといったバックエンドの機能が全て一つのシステムとなっています。

また、CRMやERP、WMSといった外部サービスと接続する場合には、ECのシステム側で専用の接続のための口を用意しているか、外部サービス別にAPIを用意するのが一般的でした。

これに対して、ヘッドレス・コマースの場合には、PCやスマートフォン、アプリ、SNSのフロントエンドはECサイトのCMSを使う必要はなく、WordPressなどのCMSで作成したものをAPIでバックエンドに接続します。

さらに、外部サービスに対してもAPIで接続するようになっていますので、他サービスとの連携も簡単に行えます。

これにより、今までは構築するECサイトのシステムによりフロントエンドのデザインなどが制限されていたものを気にすることなく、APIが繋げられればPCやスマートフォン、アプリを自由に構築する事ができるようになりました。

さらに、Facebookページのストアタブから商品を投稿して販売したり、自分のWebサイトやブログに購入ボタンを埋め込んで商品を販売したり、Instagramの投稿にタグ付けしてInstagramで商品を販売したり、Messengerでユーザーと会話する中で直接販売を行ったりといったこともできます。

このように、フロントエンドどバックエンドを切り離すことで、採用するプラットフォームの制限を受けにくいというのが、ヘッドレス・コマースのメリットですが、制限がない訳ではないという点では注意が必要です。

Shopifyのデメリット

このように様々なメリットがあるShopifyですが、やはりデメリットもあります。

オプションとバリエーションの制限が厳しい

Shopifyには、オプションの設定できるのが「サイズ・素材・ラッピング」であり、その登録上限数は3つまでとなっています。

また、バリエーションとして、「赤、白、黒」や「S、M、L」についても、登録上限数が100までとなっています。

さらに、オプションには画像登録ができません。(バリエーションの組み合わせには画像登録ができます。)

もちろん、アプリで対応しているものがありますが、標準では機能がありません。

日本語化の問題

Shopifyのデメリットとしては、まだ完全に日本へのローカライズ対応が終わっていないという点です。

そのため、管理画面は基本的に日本語化はされていますが、メッセージの一部が英語のままだったりしています。

ドキュメント類に関しては英語のままのものも多く、特にテーマや開発系については基本的に英語だけの資料しかない状態です。

Developing on Shopify
Developing on Shopify

また、英語圏にない概念、例えば注文者や配送先のお名前のふりがなを入れる欄はありません。

そのため、エンタープライズ向けにShopify PLUSというプランを導入するか、有償の「アプリ」で対応するなどの工夫が要ります。

同様に商品名にもふりがなはありませんので、商品名にいれて運用するなど運用面でカバーする必要があります。

配送と配達
配送と配達

送料は、重量か注文金額での送料設定しか標準機能ではできませんので、佐川急便、ヤマト運輸、日本郵便、FedEx、DHL、UPSなど、 国内外の大手運送会社と連携し、運送会社の選定から送り状の作成まで、ワンストップで行うためには、有償の「アプリ」を導入する必要があります。

送料を編集する
送料を編集する

他にも、デフォルトのカート画面だと配送日時指定ができなかったり、送り状の作成は標準でできない、商品に項目を標準では追加できない、といったように標準機能ではなく有償の「アプリ」で解決をしないといけないものも多数あります。

「アプリ」についても、海外のベンダーが作成しているものがメインのため、英語で設定をしなくてはなりません。

例えば、以下の「Order Printer」のアプリは、カスタムレシート、ラベル、レシート、明細表の印刷をできるメジャーな「アプリ」ですが、管理画面の設定は英語で行う必要があります。

Order Printer
Order Printer

最近でこそShopifyについての日本語での解説記事が増えてきていますが、最新の情報や機能については英語となるため、使いこなすためには英語が必要になります。

このように、日々改善が行われてはいますが、まだ日本語向け対応の面では物足りない部分があるのと、欲しい機能については「アプリ」を購入するか、自分で作成をしなければならない点があります。

広告を管理するユーザーの権限設定がない

ECサイトの運用は、スモールスタートで始めて売上があがらないうちは少人数で行う事が多いでしょう。

しかし、最初から一定の売上規模を見越した運用を行う場合や、ある程度の売上があがってきた場合には、対応する業務によって人員を分けたり、外部にアウトソーシングしたりするのが一般的です。

そういった場合に、Shopifyではスタッフの権限の選択を設定してユーザーを管理することができます。

しかし、この権限の管理にはリスティング広告やアフィリエイト広告など、広告代理店が使う機能があまりありませんので集客の部分だけを切り出して運用を行う、というユーザーの権限設定ができないというところがあります。

カスタマイズが難しい

Shopifyは、 オープンソースで開発されている独自のテンプレート言語の「Liquid」を使用しています。

テーマはこの「Liquid」作成されていますので、「Liquid」でのコーディング方法を理解しているか、「Liquid」を書ける技術者に依頼をしない限り、テーマのカスタマイズは難しいものがあります。

また、実際にECサイトの運用を行って広告などを活用していくと、コンバージョン測定やリターゲティング広告の対応で、ECサイト側でタグなどの対応を行う事が必ず求められます。

しかし、Shopifyはテンプレートのコードを触って埋め込みを行う必要があるため、ある程度技術的な理解がない場合には、タグを埋め込む事も難しいというのがあります。

Shopify ペイメントを利用しない場合の手数料が高い

Shopifyの価格表にあるように、日本のオンラインクレジットカード手数料の場合、ベーシックでの決済手数料3.4%は、他社と比較するとかなり安くなっていますが、「Shopify ペイメントを有効にせず他の決済サービスを使用する場合の追加料金」は、ベーシックだと+2%となり、合計の決済手数料は5.4%となります。

スタンダードでも+1.0%で4.3% 、プレミアムで+0.5%で3.75%とかなり高くなってしまいます。

クレジットカード決済の手数料については、利用金額が増えるに従って交渉が可能ですが、Shopifyを使い続ける限りこの割合は固定です。

そのため、クレジットカード決済手数料で有利な契約をしている企業の場合、Shopifyを使う方が割高になってしまうケースがあります。

ECサイトを立ち上げるまでの設定が難しい

Shopifyは、確かに様々な機能が低価格で提供されています。

しかし、初期設定を行って、デザインを適用して、ECサイトを立ち上げようと思うと、かなり多くの設定を行う必要があり、言われている程簡単ではありません。

そのため、簡単にECサイトを構築したいと思ってShopifyを借りてみても、ECサイトを立ち上げるには結構な時間が必要です。

自社で必要なものを見極める

このようにメリットもデメリットもあるShopifyですが、ECサイトはどういった機能があるかよりも、ECサイトに集客ができて、売上が上がらないと結局は意味がありません。

集客については、既に自社ブランドでの認知度がある企業や、自社Webサイトでの集客やSNSの運用ができている企業でない限り、新規でECサイトを構築する場合には、どういったECのシステムを使うかよりも、マーケットプレイスでの出店の方が集客や売上が期待できる場合もあります。

ECサイトで必要とする機能についても、一般的な機能がメインで複雑なものが必要ない場合には、ASPやカートサービスの方が低コストで必要な機能が使える場合もあります。

そのため、Shopifyも様々なサービスの中の一つとして選択肢に入れるのは問題ありませんが、自社にとって何が必要で、今後どういった形の運用を行っていくのかを見据えて、選択をするのが望ましいでしょう。

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